12026年4月「ダブル改定」の全体像

2026年4月、Amazonは日本国内のセラー向け手数料を二段階で改定しました。1点だけなら軽微な変更に見えますが、販売手数料の値上げ長期在庫への課金強化が同時に走ることで、FBAで在庫を持っている店舗ほど利益率への影響が大きくなります。

2026年4月の主な改定ポイント

  • 2026年4月1日:販売手数料率を全カテゴリーで0.4%引き上げ(750円超の商品が対象)
  • 2026年4月1日:FBA配送代行手数料を一部引き下げ(標準サイズ20〜80cm・最大5kg)
  • 2026年4月15日:365日超保管の商品に月額20円/点の最低長期在庫追加手数料を新設
  • メディア・Amazonデバイス用アクセサリ・TVゲーム系は金額に関係なく0.4%引き上げ

一見すると「販売手数料は0.4%だけだから誤差じゃないか」と思うかもしれません。しかし年商数千万〜数億のFBA店舗では、0.4%の差は年間数十万〜数百万円の利益差になります。さらに長期在庫課金が重なると、売れ残りSKUが自動的に赤字化する構造に変わるのが本改定の本質です。

2販売手数料0.4%引き上げ ― 対象と例外

まず最初の改定点、販売手数料率の0.4%引き上げを整理します。

750円を境にルールが変わる

一律引き上げではありません。商品1点あたりの売上合計が750円を超えるかどうかで扱いが分かれます。

商品1点あたり売上 販売手数料の変更 備考
750円以下 原則 変更なし 低単価商品は従来の料率が維持される
750円超 料率を0.4%引き上げ ほぼ全カテゴリーが対象
メディア・Amazonデバイス用アクセサリ・TVゲーム 金額にかかわらず0.4%引き上げ 750円の区切りがない

具体的にどれくらい変わるのか

Amazon公式の例で確認します。エレクトロニクスアクセサリ(料率10%)で1,000円の商品を販売した場合:

# 改定前 販売手数料 = 1,000円 × 10.0% = 100円 # 改定後(2026年4月1日〜) 販売手数料 = 1,000円 × 10.4% = 104円 # 差額: 1点あたり +4円

1点4円なら小さく見えますが、月1,000点売る商品では月4,000円、年48,000円。これがほぼ全SKUに掛かります。

利益率の薄い商品ほどダメージが大きい

  • 利益率10%の商品 → 販売手数料0.4%増で利益が約4%減
  • 利益率5%の商品 → 販売手数料0.4%増で利益が約8%減
  • 薄利多売で回していた低利益SKUは赤字転落の可能性
  • 特に家電・アクセサリ・消耗品系の価格競争カテゴリは要注意

3長期在庫追加手数料「月20円/点」の新ルール

本改定の中でもっとも痛みが大きいのが、2026年4月15日から始まる長期在庫追加手数料の最低料金ルールです。

これまでのルールとの違い

Amazon FBAではもともと、365日(12か月)を超えてFCに保管された在庫に対して長期在庫追加手数料が発生していました。従来は「サイズ容積に応じた単価」のみでしたが、今回の改定で1点あたり月額20円の最低料金が追加されます。

保管期間 改定前 改定後(2026年4月15日〜)
〜271日 通常の保管手数料のみ 同左
271〜365日 追加手数料(容積ベース) 同左
365日超 容積ベースの追加手数料 容積ベース or 20円/点/月(高い方)

小型・軽量の売れ残り商品が直撃される

ここが実務的に重要なポイントです。容積が小さい商品ほど、従来の容積ベース計算では追加手数料が安かった。たとえばアクセサリや小物は、従来は1点あたり月2〜5円程度で済んでいたケースも多かった。

そこに「最低20円/点」が入ると、小型商品の長期在庫コストが4〜10倍に跳ね上がります。

# 小型商品(容積ベースでは月3円だった商品を365日超保管) # 改定前 長期在庫追加手数料 = 3円/月 # 改定後 長期在庫追加手数料 = max(3円, 20円) = 20円/月 # 100SKU × 月20円 = 月2,000円、年24,000円 # 1,000SKU × 月20円 = 月20,000円、年240,000円

要注意なFBA在庫パターン

  • 「いつか売れるだろう」と残している小型アクセサリの長期在庫
  • シーズン外れの商品(夏物・冬物の売れ残り)
  • カラバリ・サイズバリ展開で売れ残っている特定SKU
  • テスト販売で入れたまま忘れているSKU
  • 複数ASINで似た商品を重複登録している場合の片方

4FBA配送代行手数料は一部「値下げ」― 恩恵を受ける商品

ここは意外な朗報です。値上げ一色ではなく、一部サイズ帯の配送代行手数料は引き下げられます。

配送代行手数料が下がる条件

  • 標準サイズ区分のうち、20cm〜80cm・最大5kgの商品
  • 商品1個あたり平均38円の引き下げ
  • アパレル・雑貨・小型家電・書籍などが該当しやすい

つまり2026年4月1日以降は、「販売手数料 +0.4% と FBA配送代行 −38円」が同時に効くことになります。商品単価が中〜高額帯で、標準サイズに収まる商品は、トータルで見ればむしろ利益が改善するケースもあり得ます。

具体的な計算例

# 2,000円のアパレル雑貨(料率10% → 10.4%、標準サイズ内) # 改定前 販売手数料: 2,000 × 10.0% = 200円 配送代行手数料: 550円(仮) 合計: 750円 # 改定後 販売手数料: 2,000 × 10.4% = 208円(+8円) 配送代行手数料: 512円(-38円) 合計: 720円(-30円) # この条件なら逆に利益が増える

ただしこれはサイズ・重量条件にきちんと収まっている場合に限ります。自社の主力SKUが本当に「標準サイズ20〜80cm・5kg以内」に収まっているかは、Amazon側のサイズ判定で必ず確認してください。

5利益を守るための5つの実務対策

改定を嘆いていても利益は戻りません。2026年4月以降、FBA店舗が今すぐやるべき実務対策を整理します。

対策1:長期在庫の棚卸しと判断フロー整備

まずは自社の在庫を保管期間別にスコアリングします。セラーセントラルの在庫年齢レポート(Inventory Age)で、何日分の在庫がどこにあるかを可視化。270日・330日・365日の3段階のアラートを設定するのが実務上の王道です。

270日経過
要注意リスト入り
330日経過
プロモーション実施
365日直前
返送 or 廃棄判定

365日を超えてから「値下げしよう」では遅い。最低330日時点で意思決定できる体制にしておくのが、20円/点ルールに殺されないコツです。

対策2:売れ残りSKUの処分ルート確立

  • 返送(Remove Inventory):自社倉庫に戻して自己発送に切り替え
  • 廃棄:商品価値がなければ廃棄料を払ってでも処分
  • Amazon Outletや値引きプロモーション:在庫一掃
  • 楽天・Yahoo!・自社ECへの移動:他モールで売り切る

特に他モールに動かせる在庫かどうかの判断は重要です。FBAにしか置いていないSKUは、他モールで売ろうにも在庫を戻す時間と送料がかかります。最初から多モール前提の在庫配分に変えていくことが長期的な解になります。

対策3:FBA+自己発送のハイブリッド運用

回転の良い主力商品はFBAで露出と配送スピードを最大化し、回転が遅い・単価が低い・在庫がかさばる商品は自己発送に切り替えるハイブリッド運用が2026年のスタンダードになりつつあります。

商品タイプ 推奨運用 理由
回転の良い主力商品 FBA Prime対象+配送代行の値下げ恩恵
単価の高いギフト・限定品 自己発送 ラッピング・同梱物で差別化
回転の遅い長尾商品 自己発送 20円/点の長期課金を回避
小型・薄利の雑貨 自己発送 or 他モール 0.4%アップと20円ルールで赤字化リスク

対策4:価格の見直し(0.4%の転嫁判断)

薄利商品は、販売価格の見直しを検討します。ただし全商品を一律に値上げするとCVRが落ちるため、以下の順番で考えます。

  1. まずカート獲得率と競合価格を確認
  2. 自社がカート獲得が強いSKUから試験的に数十円上げる
  3. 売上数量の変化をモニタリング
  4. 問題なければ他SKUへ展開

相乗り出品では価格競争が激しいカテゴリも多く、安易な値上げはカートを失うリスクと直結します。事前の価格感度分析が必須です。

対策5:SKU別の粗利再計算

一番大事なのがこれです。改定後の手数料で全SKUの粗利を再計算し、どのSKUが「赤字」「利益ゼロ」「ギリギリ」になったのかを可視化します。

SKU別粗利再計算の計算式

  • 売上単価 − 仕入原価 − 販売手数料(改定後の料率)− FBA配送代行手数料(改定後)− 保管手数料 − 長期在庫追加手数料 − 送料 − 梱包資材費 = 粗利
  • これを月次の売上数量で掛けて、SKU別の年間粗利額を出す
  • 粗利率5%以下のSKUは即撤退・値上げ・自己発送化のいずれかを判断

この計算、Excelで手作業だと1,000SKUで半日〜1日かかります。SP-APIで手数料データと在庫年齢を自動取得する仕組みを組めば、毎月ボタン一つで再計算できるようになります。

6この改定が示すAmazonの「方向性」を読む

個々の数字より重要なのは、Amazonが何を狙っているのかを読むことです。

「回転しない在庫を置かせない」方向へ

長期在庫追加手数料の最低料金化は、回転の遅い在庫をFCから追い出すメッセージです。AmazonのFCスペースには限りがあり、倉庫効率を上げるには「動かない商品を減らす」のが合理的。今後も長期在庫への課金は段階的に強化される可能性が高いと見るべきです。

「少品種・高回転」がFBAの勝ち筋に

今回の改定は、広く浅くSKUを並べる戦略に逆風です。カラバリ・サイズバリを大量に入れて在庫リスクを自社で抱える運用は、長期在庫課金で粗利を削られる構造になりました。

逆に、回転の速い主力SKUに在庫を集中させるほうが、販売手数料0.4%の差も吸収できる。Amazonは「選ばれる商品だけをFBAに置いてほしい」という方向に舵を切っています。

多モール分散の重要性はさらに高まる

Amazon一極集中は、手数料改定があるたびに利益が直撃されるリスクを抱えます。楽天・Yahoo!・自社ECに在庫と売上を分散することで、どこかの改定があっても全体で吸収できる。2026年は多モール在庫設計を本気で見直す年です。

7仕組みで解決する ― 在庫判断を自動化する

ここまで述べた対策を全部、目視と手作業で回すのは現実的ではありません。数百〜数千のSKUがあり、毎日在庫年齢が変わる。担当者が1人で見切れる量を超えています。

仕組み化するならこれをセットで作る

  • 在庫年齢ダッシュボード ― SP-APIで取得した在庫年齢を270日・330日・365日で色分け
  • SKU別粗利再計算バッチ ― 改定後の手数料で全SKUの粗利を毎週自動再計算
  • 長期在庫アラート ― 330日到達で担当者にSlack/メール通知、返送 or プロモ判断を促す
  • 多モール在庫配分シミュレーター ― 楽天・Yahoo!・自社EC側の在庫状況も踏まえて再配分提案
  • 価格感度モニター ― カート獲得率と競合価格を日次で監視、値上げ余地をスコアリング

「Amazonの手数料がまた上がった」と嘆いているだけでは、利益はじわじわ削られ続けます。改定のたびにデータを見て意思決定する仕組みを持っている店舗だけが、同じ条件下でも利益を守れる。

11年のEC実務経験と、Amazon SP-API・楽天RMS API・Yahoo!ショッピングAPIを扱った開発経験の両方から、「改定されても慌てない在庫・価格運用」を設計できます。「2026年4月の改定で自社のどのSKUがヤバいか把握できていない」「長期在庫の判断を担当者の感覚でやっている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。